人生脚本に気づき自分を変える2


【症例1】どうしようもない怒り

Y氏(32歳)は、交流分析の講習会などで自分について学習する間に、自分が父親に対して怒りを抱いていることに気づきました。しかしY氏は自分の攻撃性を知ってから、かえってそれをコントロールできなくなったと訴えて相談に来たのです。
「近頃は、妻や友人に八つ当たりすることが多く、対人関係もうまくいかない。頭ではわかっているが、実際はうまくいかない。このままだと人を傷つけたり、交通事故でも起こすのではないかと心配だ」というのです。Y氏は心理療法やカウンセリングについて熱心に読書し、原因追求のも努力するタイプの人でした。

交流分析ではまず自分との契約を結びます。Y氏と治療者は彼の感情について話し合った後「自分が自分の感情の責任者だ。怒りをコントロールできないのではなく、実際は自分がコントロールしていないのだ」と合意するに至りました。
そこでY氏は「今日からは、怒りを自分の支配下におく」という契約を自分自身と結んだのです。

次に治療者はY氏に、最近腹を立てた出来事について話すようにすすめました。彼は顔を真っ赤にして上司に対する怒りをぶちまけました。
そこで治療者は椅子を一つ持ってきて、それをたたいて体で怒りを出すように告げました。Y氏は「課長の馬鹿野郎」と叫びながら椅子を両手の拳でたたき出しましたが、やがて興奮してその椅子を持ち上げて投げ始めたのです。

その時点で治療者は「Yさん、その椅子を壊して弁償するとしたら、いくらでしょう?」と質問を発しました。彼は一時けげんな面持ちで治療所を見つめていましたが、すぐさま「これはいい椅子ですから五万円くらいでしょう」と答えました。
治療者とY氏の間にしばらく沈黙が生じました。彼は椅子を投げるのをやめ、静かにゆっくりと椅子を数回たたきましたが、やがて笑い出しました。Y氏は、自分にうなずきながら言いました「怒っても考えることができるんですね。怒っても物を壊したり、人を傷つけなくてもすむんですね」

次回のセッションでは、Y氏のもともとの怒りが父親に対するものであることが確認されました。しかし彼は原因の解明よりも、怒りを自己コントロールできるという体験の方が、今の自分には役に立つといって治療の終結を申し出ました。治療者もこれに対してY氏の建設的な力を信用しますと言って合意しました。

感情を自己コントロールするということは、それを禁じたり押さえ込んだりすることとは根本的に異なります。怒りは感じたでけ感じていいのです。しかしそれをどう現わすかについては、感情 C の言いなりになる必要はないのです。

人間は自分も他人も傷つけることなく、怒りを支配することは可能なのです。P、A、Cを使いこなせるように訓練すれば C の真っただ中にあっても A の判断を働かせ自分の望む行動を選択することができるのです。勇敢に自分の内に潜む知性の力を体験し盲目の衝動から自己を解放し、心の自由とバランスを取り戻すことは可能なのです(もしそんな力は自分にはないと言う方がおられれば、長期にわたって精神療法をお受けになることが必要です)

次に紹介するのは「再決断療法」と呼ばれるものです。
交流分析とゲシュタルト療法を併用したこの手法では、まずあなたに悩みや問題を具体的に話してもらった後、その問題にまつわる感情、とくに不快感情に焦点を合わせます。このあなた特有の慢性の不快感(後悔、怒り、罪悪感、自己嫌悪など)をスタート点にします。

次に目を閉じて1,2分その感情にひたるように指示します。そしてあなたが自分の C に問いかけて、これと同じような身体感覚と感情状態を過去に味わったことがないか、想起するように促します。経験では、80%の患者さんが過去の体験を思い出して報告してくれます。

例えば小学校のころ、担任の先生の前でこれと同じような気持ちを味わったとか、父親に叱られたときに、同じような恐怖にかられたなど、いきいきとした記憶がよみがえってきます。

さらにその場面を再現し、感情の再体験へと進みます。例えば、父親の前でびくびくしている姿を再現してみます。次にその感情に直結する思考を禁止令の概念でとらえてゆきます。例えば「自己主張してはならない」といった自然な行動を禁止するような考え方が禁止令です。
現在の不適応的な交流様式は、このような幼時の結論の結果であることを両者で確認します。

最後に「もう一度しの場にいたら、どういう行動をとりますか?」と問い、あなたに今の自分から新たな問題解決法を編み出してもらうようにします。心理学的に言えば、過去の非合理的な条件づけを解除し、建設的な行動様式を新たに学習するのです。
☆このプロセスを明日、【症例2】でご説明します。


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2024年1月12日